女性のキャリア開発プログラム

2022年に改正された「女性活躍推進法」により、企業は自社の女性活躍の状況を把握・分析し、具体的な目標を定めた行動計画を策定し、その取り組み状況を公表することが義務となりました。これらは、大企業のみならず、101人以上300人以下の中小企業においても適用されています。今後ますます女性が働きやすく、活躍できる社会の実現を目指したいですね。
そのような背景から、日本で女性向けにマネジメントを教える機関やプログラムが多数出てきています。企業向け研修、公開講座、ビジネススクール、コーチングなど、様々な形式で提供されています。
以下に主なタイプと具体的な機関をご紹介してみます。
目次
1. 企業向け研修・コンサルティング会社
多くの人材育成会社が、企業からの依頼に応じて、女性管理職育成や女性活躍推進のためのマネジメント研修を提供しています。
- インソース: 女性活躍推進研修、管理職向け女性活躍推進研修など、多様なプログラムを提供しています。特に「管理職向け女性活躍推進研修~部下の成長と活躍を促すマネジメント力強化編」では、無意識のバイアスを乗り越え、女性部下の成長を促す業務采配力やコミュニケーション力を強化することに重点を置いています。
- パソナHRソリューション: 「Women’s Advanced Program(WAP)」のように、経営幹部に求められるビジネス力やプレゼンス力を学ぶ合宿形式のプログラムを提供し、社会に貢献できる女性幹部候補の育成を目指しています。
- SMBCコンサルティング: 「女性管理職・女性リーダー育成」の研修情報・セミナーを提供しており、マインドセット、コミュニケーション、アサーションなどを学ぶプログラムがあります。
- リクルートマネジメントソリューションズ: 女性の活躍推進に関する研修を提供しており、特に管理職登用「前」のトレーニングの重要性を強調しています。
- プレジデント総合研究所: 「ダイバーシティマネジメント研修」など、若手・女性部下の多様性をチームの力にするマネジメント研修を提供しています。アンコンシャスバイアスへの理解や、部下を成長へ導くためのポイントを学びます。
- ビジネスコーチ株式会社: 女性リーダー育成プログラムを提供しており、女性の特性を理解し、自信を高めることに加えて、メンターとメンティの育成もサポートしています。
2. ビジネススクール・大学院
より体系的に経営学やマネジメントを学びたい場合は、ビジネススクールや大学院のプログラムも選択肢となります。最近では女性の受講生が増えているスクールもあります。
- 日本生産性本部 経営アカデミー: 「マネジメント・ケイパビリティ 女性リーダー研修」を提供しており、約2ヶ月間のインターバル学習を通じて、Well-being、リーダーシップ、経営戦略など多岐にわたるテーマを学びます。
- 青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール): デイタイムコースでは女性の割合が高い傾向にあり、MBA取得を目指しながらマネジメントを学ぶことができます。
- ウォートンの女性エグゼクティブ教育プログラム(アルマ・クリエイション株式会社を通じて日本で展開): 世界トップクラスのビジネススクールの女性リーダー育成オンライン講座が、通訳付きで日本でも受講可能です。ライフプランとキャリアの両立をしながら、専門的な教育を受けられます。
3. 公開講座
企業に属さない個人でも受講できる公開講座も多数開催されています。
- インソース: 女性活躍推進研修の公開講座も開催しており、女性リーダーが直面する課題解決や、マネジメントスキルの向上を目指します。
- 株式会社ビジネスコンサルタント: 「WLP(女性リーダーシップ開発プログラム)」のような公開講座を提供しています。現管理職や近い将来に管理者となる女性リーダーを対象に、リーダーシップ開発を支援します。
4. コーチングサービス
個人の課題や目標に合わせたパーソナルなサポートを求める場合は、コーチングが有効です。
- ZaPASS COACHING: 女性管理職に特化したコーチングプログラムを提供しており、マネージャーとしての自己効力感を高め、リーダーシップの強化・発揮を支援します。
- コーチング・バンク: 女性活躍推進に特化したコーチングサービスを提供しているコーチが複数所属しており、仕事とプライベートの両立やキャリアに関する悩みに対応しています。
選ぶ際のポイント:
- 目的: どのようなスキルを身につけたいのか、キャリアのどの段階にいるのかを明確にする。
- 形式: 集合研修、オンライン研修、合宿、コーチングなど、自分に合った学習スタイルを選ぶ。
- 期間・費用: プログラムの期間、費用、参加条件を確認する。
- 実績: 研修会社やスクールの実績、受講者の声などを参考にする。
- 対象者: プログラムが想定する対象者(管理職候補、現管理職、経営幹部候補など)と自分の状況が合っているか確認する。
これらを参考に、ご自身のニーズに合ったマネジメント教育の場を探してみるのもいいでしょう。

「アンコンシャス・バイアス」とは?
昨今よく聞く、「アンコンシャス・バイアス」という単語。「アンコンシャス・バイアス」とは、「無意識の思い込み、偏見」を意味する言葉です。私たちはこれまでの経験や見聞きしたことに基づいて、無意識のうちに物事を自分なりに解釈し、判断してしまうことがあります。これは脳の機能の一部であり、誰にでも起こりうるものです。
アンコンシャス・バイアスが引き起こされる要因
アンコンシャス・バイアスは、主に以下の3つの要因によって引き起こされると言われています。
- エゴ: 自分の考えが正しいと思い込みたい気持ち。
- 習慣や慣習: これまでのやり方や常識に囚われてしまうこと。
- 感情スイッチ: 感情的になったときに、冷静な判断ができないこと。
アンコンシャス・バイアスの例
様々な種類のアンコンシャス・バイアスがありますが、代表的なものとしては以下のようなものがあります。
- ステレオタイプ・バイアス: ジェンダー、年齢、出身地、職業などに基づいて、特定の集団に対して固定観念や先入観を持つこと。
- 例:「女性は理系の進路に向いていない」「男性は仕事より家庭を優先すべきではない」
- 例:「若手社員には雑用を任せるべき」「年配社員はITが苦手」
- 確証バイアス: 自分の仮説や信じたい情報ばかりを集め、それに反する情報を無視しようとすること。
- 例:「血液型診断に科学的根拠はないけれど、A型は真面目だと信じる」
- 正常性バイアス: 危機的な状況において、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりすること。
- 例:災害時に「自分は大丈夫」と思い込み、避難が遅れる
- ハロー効果: ある対象の目立つ特徴が、他の印象や評価全体を歪めてしまうこと。
- 例:学歴が高い人は仕事もできるだろう、と高評価してしまう
- 集団同調性バイアス: 所属する集団の意見や行動に合わせようとすること。
- 例:「みんながそう言っているから」と、多数決の際に自分の意見とは違う方に票を入れてしまう
アンコンシャス・バイアスの影響
アンコンシャス・バイアスは、無意識のうちに以下のような悪影響をもたらす可能性があります。
- 個人の可能性を狭める: 自分の思い込みで他者の能力や可能性を決めつけてしまい、成長の機会を奪う。
- 人間関係の悪化: 無意識の言動で相手を傷つけたり、不快な思いをさせたりする。
- 公正な判断の妨げ: 採用、評価、昇進などの場面で、公平な判断ができない。
- 多様性の阻害: 異なる価値観や意見を受け入れにくくなり、組織全体の多様性を損なう。
- ハラスメント: 無意識の偏見がハラスメントにつながる場合がある。
アンコンシャス・バイアスへの対処法・克服方法
アンコンシャス・バイアスを完全に無くすことは難しいですが、その影響を減らすための意識的な取り組みが重要です。
- 自己認識を深める: まずは自分自身にどのようなアンコンシャス・バイアスがあるのかを自覚すること。「~べきだ」「普通は~」といった決めつけの言葉が出ていないか、相手の反応に違和感がないかなどを振り返る。
- 多様な視点を持つ: 自分の考え方だけでなく、真逆の立場や異なる価値観を持つ人の視点も意識する。様々な情報源から情報を得るように心がける。
- 「なぜ?」を問いかける: 自分の判断や思い込みに対して、「なぜそう思うのか?」「本当にそうなのか?」と問いかけ、根拠を考える習慣をつける。
- 対話とフィードバック: 他者との対話を通じて、自分の考えの偏りに気づく。また、相手の表情や態度からサインを読み取り、自分の言動を振り返る。
- 研修やトレーニング: アンコンシャス・バイアスに関する研修やワークショップに参加し、知識を深め、具体的な対処法を学ぶ。
アンコンシャス・バイアスは誰にでもあるものですが、それに気づき、意識的に対処することで、より公正で多様性のある社会や職場を築くことができます。